食品用途化方法&高機能化で特許(※)取得!

コーングルテンミール×麹菌

※特許番号:7454201号「糸状菌固体培養物の製造方法、及び糸状菌固体培養物」



日本の伝統的な麹づくりに代表される

【固体培養技術】を活用した、未利用資源の有効利用


フジワラテクノアートの製麹装置
フジワラテクノアートの製麹装置

私たちフジワラテクノアートは、醤油・味噌・日本酒・焼酎などの醸造機械、浸漬・焙炒・蒸煮・冷却などの原料処理機械を設計・製作しているメーカーです。

日本の醸造文化の中で欠かせない、1000年以上培われ伝承されてきた匠の技による麹づくりを、最新技術で機械化、自動化そして知能化する取り組みを行っています。日本国内で機械によって造られる麹の80%は、当社の機械によるものです。(※自社調べ)

 

麹づくりに代表される【固体培養技術】には、下記の特徴があります。

高い生産性

複数のタンパク質を同時に高生産が可能。

【事例】

・アミラーゼ・プロテアーゼなどの酵素生産

・有用物質を含む機能性飼料

物質変換

機能性の付与が可能。

【事例】

・化粧品素材製造

・機能性食品製造

原料自体の高付加価値化

固体培養では培地となる原料まるごと再利用が可能。

資源の効率的な活用ができる。

【事例】

・麹、醸造食品

・未利用バイオマスの新規用途 

 開発


このように有用な特性を持ちながら、「固体培養技術」は培養時に高度な制御技術が必要なため、液体培養と比較すると産業化が遅れています。

 

しかし私たちが「豊かで持続可能な社会の実現」を考える中で、高い生産性を誇り培地ごと利用可能で、高付加価値化できる固体培養技術は、基盤技術の一つになると確信しています。

 

私たちは微生物が有益な物質を効率的に生産する能力を最適化、最大化し産業化する取り組みを始めています。

今までも食品副産物として、抽出後のコーヒー豆、小麦フスマ、ワインパミス、オリーブ等を産学官と協力して研究を行ってきました。

 


その中の一つが、今回のコーングルテンミールの麹培養による高機能化および食用化研究です。

コーングルテンミールとは


コーングルテンミール」とは、コーンスターチ製造における副産物です。

 

全世界で生産されるデンプンの約8割が、トウモロコシが原料のコーンスターチと言われています。

「コーンスターチ」は、デンプンとしてそのまま販売されるだけでなく、加工を経て水あめ、ぶどう糖、清涼飲料や乳酸菌飲料に配合する異性化液糖、果糖などとして食品に配合されたり、段ボール、製紙、繊維などの工業用途、医薬用途など私たちの生活に広く活用されています。

 

その副産物であるコーングルテンミールは、タンパク質を主成分とし、各種アミノ酸・ビタミン類・無機塩類などヒトにも有用な成分を多く含んでいます。

しかし現在主流のコーンスターチ製造方法では、コーングルテンミールに二酸化硫黄(SO₂)が食品の基準値(一部除く)である30ppm以上残留しており、食品として活用することができません。

 

今回私たちフジワラテクノアートは、共同発明者である三井物産株式会社と共に、この問題に【固体培養技術】を活用し、取り組みました。

糸状菌固体培養物の製造方法、及び糸状菌固体培養物(特許番号:7454201号)

食品用途化「二酸化硫黄(SO₂)濃度の低減」


今回の発明では、食用への転換を見込んで食経験のある菌を選定し、培養時間・品温管理などについて実験を行いました。

 

結果、

培養前は二酸化硫黄の平均値425ppmに対し、

培養後は平均24ppmと(今回の実験内では、最大値も30ppm未満)、食品規格基準内まで下がりました。


このことにより、コーングルテンミールに麹菌を接種し培養する過程で二酸化硫黄が低減され、食品での利用基準をクリアしたと言えます。

高付加価値化「エルゴチオネイン」の生成


エルゴチオネインとは、アミノ酸の同族体でキノコや麹菌など菌類で生成される物質です。

動植物自身では生合成ができないため、食べ物などから接種することで、身体の中で機能します。

近年、エルゴチオネインは抗酸化作用が非常に高く、脳機能の維持、睡眠の質改善、美肌に効果が期待されると注目を浴びています。


 

≪エルゴチオネインに期待される効果≫

●食品の褐色・変色防止に効果がある

●紫外線・ガンマ線に対する

 保護効果があり、化粧品に応用されている

●抗炎症作用がある

●睡眠の質改善効果がある

●記憶注意力を維持する (機能性表示食品)


 

培養前のコーングルテンミールを分析しましたが、エルゴチオネインは検出されませんでした。(定量下限5mg以下/100g)

培養方法を何パターンか検討したところ、品温管理と培養時間の設定が、エルゴチオネインの産出量に大きく寄与することが分かりました。


結果、培養後の独自麹培養物に最大45mg/100g程度のエルゴチオネインが含有されていました。

エルゴチオネインは、キノコ等の菌類以外にも、麹菌をはじめとする微生物からも産出されることが知られていました。

今回の結果から米よりもコーングルテンミールの方が、エルゴチオネイン産出の培地として効率の良いことが分かりました。

「コーングルテンミール」のこれから


今回のコーングルテンミール培養物からは、エルゴチオネイン以外にも様々な成分が検出されました。

 

◆ βグルカン、麹菌菌体:免疫賦活効果

◆ ビタミン類(B2、B3、B6等):皮膚や粘膜の健康維持

◆ グルタミン酸:うまみ増加

 

これにより、特定成分の活用だけでなく、コーングルテンミールそのものを摂取することによる健康効果への期待も高まっています。

麹菌イメージ
麹菌イメージ

 

また今回生成した固体培養物は、単なる健康維持・促進目的による活用方法だけではありません。

 

 

―――世界的な課題《タンパク質クライシス》の解決―――

 

タンパク質クライシスとは、世界的な人口爆発に加え新興国の経済成長に伴うタンパク質摂取量増加により、動物性タンパクの不足が生じる問題です。対応策として、持続可能な農業生産システムの普及、植物性タンパクや代替タンパク活用の注目が高まっており、世界で様々な解決方法が模索されています。

 

コーングルテンミールの主成分はタンパク質です。

現在コーングルテンミールは処理方法によっては人の食品として活用できないため、主に畜産飼料として利用されています。しかし麹により有用で安全性の高い食品素材に変換することで、私たちの健やかな生活を支える食品のひとつとなる可能性を大いに秘めています。

 

私たちはこの研究が、効率の良い循環型社会を形成し、タンパク質クライシスに一石を投じる存在となることを期待しています。

まとめ


 私たちフジワラテクノアートは、醤油や味噌、日本酒など醸造食品用機械を設計・製作するメーカーです。日本の伝統的な製麹技術を機械化する中で、固体培養技術をベースとした微生物研究を進めてきました。

微生物はその種類も、生成する物質も、有用性もまだまだ無限大の可能性を秘めています。

これからも社会的課題と未利用資源の活用のため、固体培養技術と微生物インダストリーの研究を進めてまいります。



最後までお読みいただきありがとうございました。

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